お電話・ご予約

症例報告

HOME症例報告犬の歯原性嚢胞
2025.09.15
麻布十番犬猫クリニック歯科

犬の歯原性嚢胞

犬の歯原性嚢胞

今回は、7か月のシーズーの歯原性嚢胞の症例を紹介させていただきます。
不妊手術の際の乳歯抜歯にて歯科レントゲンを撮影したところ、埋伏歯とそれに伴う歯原性嚢胞を発見いたしました。
後日、マイクロスコープ下にて歯原性嚢胞の外科的摘出を実施いたしました。

嚢胞摘出の手術では、嚢胞の被膜を取り残してしまうと再発のリスクが高いため、
被膜を取り残さないように嚢胞内部を隅々まで観察し、細かい被膜まで入念に取り除く必要があります。
当院ではマイクロスコープを完備しており、20倍以上の拡大視野にて手術の実施が可能なため、
再発のリスクを最小限に抑えられます。

歯原性嚢胞でお困りの際は、当院までぜひご相談ください。

 

犬の歯原性嚢胞とは?

概要

歯原性嚢胞は、歯の発生に関与する歯原性上皮由来の嚢胞で、顎骨内に形成される非腫瘍性病変。ヒトでは比較的頻度が高いが、犬では比較的まれ。しかし、無症状で進行し、顎骨の破壊や歯の脱落を引き起こすことがあるため、注意が必要。

好発部位とリスク因子

下顎の未萌出の第三前臼歯や犬歯部
小型犬種(ヨークシャーテリア、トイプードル、シーズーなど)に多いとされる
「埋伏歯(unerupted tooth)」がある場合に注意

診断

1. 臨床症状(多くは無症状)

初期には症状なし
進行すると:顎の腫脹、顎骨の変形、歯の動揺や脱落、鼻漏、顔面の腫れ(上顎病変の場合)

2. 画像診断

X線:放射線透過性の嚢胞様病変、埋伏歯の確認
CT:骨破壊の程度、嚢胞の拡がり、周囲構造との関係を評価
MRI:軟部組織との関係性を見る場合

3. 細胞診または病理組織学的検査

外科摘出後の病理検査が確定診断となる
嚢胞内容物や壁の組織像(歯原性上皮、角化、炎症細胞など)

治療法

外科的摘出が第一選択

嚢胞摘出術

嚢胞を完全に除去し、同時に関連する埋伏歯も抜歯する。再発予防のため嚢胞壁の完全除去が重要。

開窓術

嚢胞が非常に大きく、顎骨の強度が低下している場合に選択。圧力を減らしてから摘出を目指す。

骨補填材の使用

欠損部に自家骨、人工骨、コラーゲン材などを填入することもある(まれ)。

再発例では再手術

角化嚢胞性歯原性腫瘍などの場合、再発率が高く定期モニタリングが必要。

フォローアップ

術後の画像診断による確認(X線またはCT)
約3〜6ヶ月ごとに定期チェック(再発予防)
埋伏歯が残っている場合は予防的抜歯の検討

予防と早期発見

若齢犬の歯の萌出異常を早期に発見
乳歯遺残や永久歯の萌出遅延がある犬ではレントゲン撮影を推奨
埋伏歯がある場合、予防的に抜歯+病理検査を行うことで嚢胞形成を未然に防ぐことが可能